詩人:千波 一也
グレープフルーツ、を啜ると
ゆびさきやら舌先やら
なぜだかきみを、
おもいだして
グレープフルーツ、か
それとも、ぼく、か
においのあふれる
部屋になる
なまなましい
いたずらみたいに
皮、をしめらせ
たね、をおとして
果汁にさまよう
皿のうえ
ナイフの光沢は
吐息にくすんでしまうから
爽やかなつもり、は
いつまでも青年を
たしなめる
フレッシュに、
唾液にまみれても
もぎたて、の顔立ち、の
ような
たぶん、
行けるところまでが真夏
グレープフルーツ、が
こぼれる、ように
こぼれる果実の
さなかで
おもう
ぼくは
いくつを食べたかな
微笑むきみのうちがわで