詩人:千波 一也
むずかしい顔をしていても
だれかに名前を
許すとき
見えない風に
腕だけ乗せる、ような
わたしはひとつの窓になる
だれかの背中のさびしさに
おもわず声を
かけるとき
揺られる髪の、
あらゆる自由の立ち位置の
ふしぎな狭さと
わたしは
向かう
探さなければならない
嘘をはたらく
そのからくりの為、
たくさんのほんとうを
きっかけにして
ねじれなければならない
愚かさに
まっすぐに
気がついてしまわぬように
ときを
わたり歩いてゆくことの不平等
そんなおおきな空の真下で、
和平は守られ
わらい合う
届かない、ということの
ひとつの幸福をわたしは溺れ
継がれる習いそのものに
くちびるを噛む
少しだけ
めまいのさなか、
ひかりを浴びて
たしかに
浴びて