詩人:千波 一也
最後に降った
雪の日のことを
思い出そうとして
思い出せなくて
そこからようやく
なつかしさが
訪れました
うしなったわけではなく
戻りたいわけでもない
いつだって
五感のきまぐれに
寄り添いながら
いるのです
ひとつ前なら風のなか
みっつ前なら
夜のくに
いつつ前なら扉の向こう
数え足りずに
陽をよみがえり
ほんとうの明日を
どこで待ちましょうか
昨日を
たやすく
捨てることなく
いつわりの名に
おびえ
ためらい
祈りをこめて
きれいな
きれいな呼び声は
はるか無限のさびしさに
似ています
さすらう時を
うなずくひとに
差しのべる手は
えいえんの
雪
すぐにも消えて
そのまま生まれて
誰かの最後と
なりながら
また