詩人:千波 一也
五月のかぜを渡るとき
遠いひかりは
よみがえる
あおたちの名の
車輪のなかで
一斉に
いま
みどりはかえる
日にかわる
かじかむばかりの
指だったのに
いつしか、
花かご
やがての雨を
かぞえることで
ゆめは、不足をせずに
持てるかぎりを
こぼれ始めて
ひとが、
きれいに、
時計塔を築きあげてゆく
とうに
過ぎ去った窓辺から、
あまりにも待ち過ぎた
街路樹、鉄橋、送電線、まで
日々の胸は
ふたつの腕に乗せて
鐘の鳴る重みを、
しかたのない吐息を、
ただ聴いている
受けとめて
いる
あやまりのすべてを
足早な季節のせいにして、
温もることに不慣れなままで、
波間になって
ゆく
割れながら、
なつかしい予感、を
たび重なる
愚かさ、を