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詩人:どるとる
優秀すぎる彼の人生はまるで作り物のように確かに精巧な出来ではある だが、あまりに精巧であるために生き生きとしたものが何ひとつないのだ
まるで完璧すぎる歌劇のように台本通りすぎて全くつまらない
アドリブも何もない
引かれた路線の上を走る列車のようになんの面白味もなく平行に流れるだけの
迷いのない人生だ
それはそれで素晴らしい
だが あまりにも彼の人生は劇じみている
すると彼は平然とわたしに言う
天才は真っ直ぐにしか歩けないのだ、と
わたしは言葉を失った
あなたは人間であるいぜんに天才だったんだとその時はじめて思わせられた
現代に生きるシェイクスピアよ
歌え ありのまま
台本通りの現実を
描け ありのまま
あなたは間違えるということはない
あなたには過ちというものがそもそもない
だが、人間ではない
あなたはあくまでも『天才』であなたにとっては『ただの天才』だから
わたしの言葉などはじめからあなたには別次元の定理だったのだろう?
などと言い交わしただけで天才との夜は更けた
昨夜あなたが言った
あの言葉が脳裏を掠める
『天才は真っ直ぐにしか歩けない』
まさにその言葉が本当ならばまさにあなたのことだ 本物の天才とはいかなるものかと疑うのなら
あなたしか該当しないだろう
だってあなたは少なくともわたしの中では群を抜く天才だから。