詩人:老女と口紅。
‐受け継がれたもの‐
希望と
もて余す程の乳房
両腕の籠に
揺られながら
頬づりと共に
母親のくれた
(生まれてきてくれて
ありがとう)
幸せになる為の
呪文を浴びながら
安堵の海に漂う僕を
優しい貴女は
大切に育ててくれた
眠れる僕に
幸 多かれと
笑顔 絶えぬようにと‥
/
心配しなくても
いいんだよ
幸福の呪文は
僕がかけておいたから
母親から受け継いだ
(生まれてきてくれて
ありがとう)を
君の小さな手の平に
聞かせておいたよ
君だけが
幸福を沢山
掴み取るようにと
僕が
両腕に抱えた幸せを
こぼさぬよう
大切な君に
そっと唱えた
ありがとう
僕は知っているのさ
母親のくれた呪文‥
本当は
万人に
幸福を呼ぶ為の
呪文ということを‥