詩人:黒夢
遠い思い出の中に置いていこうとした
微かな願いが蘇る。
中途半端に
ただ忘れようと躍起になっていた苦い願い。
あの時それを言葉にすればよかったと
今更になってから思う。
あの頃、僕が抱えていた
沢山のもどかしい思いは全部
可愛らしい、子供の願い事の領域だったことに
気付いたから。
子供ながらにその思いと闘おうとする
自分の姿を思い出し、思わず嘲笑をうかべる。
大きくなるにつれ
持っていた夢も、かざした理想でさえも
一つずつ踏み躙られて
消えていった。
そうして僕の中に残ったのは
酷い倦怠感と、軽い眩暈。
昔の自分に対する、罪悪感。
今の僕にとってはくだらない
あの頃の僕にとっては何より重要な
切実な願いを抱えた僕が
記憶の片隅に存在する。
後悔したって過去が変わらないことは知っている。
頭の中では理解しているのに。
忘れたいのに、忘れられないあの日の願い。
消したいのに、消えることない自責の念。
頭の中では、解っているんだ。
ただ、それを否定したい自分がいることも分かっている。