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[104400] 波間の住人

詩人:千波 一也



揺れる、

ということを

幾度も揺れながら


風景は、

まったくとおい

わたしで

あった




えがかれてゆく、海


まっ白なのに

それはもう

古いかげ


波が

うたがい、過ぎて、

まぶしさに眩む



わたしの

はかなさは

たとえば枯葉のさいごのような、

くずれぬ声を持たぬこと


はざまに、

ただ、はざまに、

置き去りではなく

取り残されるでもなく


ひとつに定まらない

その、ひとつについて

あまりにも

やわらかに

すみたがる



かぞえ忘れた夏の日、は

絶えることのない

水たちの文字


いくつでも

失うことではじまるけれど


おそれ、


たやすくはないことばの眠りに

ひかりを満たす


迷子のように、

すでにまもられ

2007/06/29 (Fri)
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