詩人:千波 一也
揺れる、
ということを
幾度も揺れながら
風景は、
まったくとおい
わたしで
あった
と
えがかれてゆく、海
まっ白なのに
それはもう
古いかげ
波が
うたがい、過ぎて、
まぶしさに眩む
わたしの
はかなさは
たとえば枯葉のさいごのような、
くずれぬ声を持たぬこと
はざまに、
ただ、はざまに、
置き去りではなく
取り残されるでもなく
ひとつに定まらない
その、ひとつについて
あまりにも
やわらかに
すみたがる
かぞえ忘れた夏の日、は
絶えることのない
水たちの文字
いくつでも
失うことではじまるけれど
おそれ、
たやすくはないことばの眠りに
ひかりを満たす
迷子のように、
すでにまもられ