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[185256] エンケラドスの感情論者

詩人:さみだれ

彼が呼吸を始めた日
宇宙は一瞬静かになった
虹色の波長の終端
何もない海の底で

彼は友達を持たず
家族を持たず
恋人も恩師も持たず
暗く冷たい海の底で生まれた

よく言えば「自由」であり
悪く言えば孤独であった
しかし感情を知らない彼に
そんなことは無意味なことで

もしこの海の底で
彼が感情を覚えたなら
それはあまりにも残酷で
とても耐えられるものではない

なら彼はなぜ生まれたの
生きるだけの生涯が
私には機械的に映るのです

分厚い氷の天蓋を
彼はまだ知らない
この光も
そのずっと向こうにいる私達も
彼はまだ知らないんだ

彼は呼吸を始めた
とても静かな時間の檻で
涙を流す彼に会えたら
笑い方を教えてあげよう、と
そう思う

2014/06/16 (Mon)
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