詩人:千波 一也
雨とよばれる
雨とはちがうそれを
よける隙間も
したう境界線も
本能のなす
川かも知れない
浴びていることを
浴びせてしまうような
無知なる無知の
さらなる先に
雨は降る
ただ純粋に
雨は降る
過剰な飾りの
あわれにあらわな裸身の上を
こぼれる音は
こぼれただろうか
果てしない孤独を
友として持つ人たちは
空をよく見て
なお底に
なる
風は
どこですか
涙や怒りや諦めや
いつわることや
いたわることや
心はどうして
ここ、なのですか
雨とよばれない
雨を注いでゆくために
もしくは
しずかな吐息の
囁きの
ため
あらゆる昔の方位から
あらゆる昔に帰るさなかを
雨は
さがしている
川音たちの
ひとつの行方を聴きながら
雨はさがしている