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詩人:どるとる
今日もなかなかにいい思いをさせてもらったよ
悲しいことももちろんあったけどね
何よりもケガひとつなく一日を終えられたことが幸せだった
見渡せば小さな幸せばかりで心から喜べるものがないなあ
なんて言う自分が嫌いで当たり前でもとてつもなく恵まれた毎日を心から喜べない自分とお別れできなくって
目に映るすべての
悲しみが流れ落ちて視界が晴れたら
そこにはいつもの真っ赤な夕陽がお待ちかね
今、まさに沈む頃合い
行かないで…
行かないで…
まるでどこかに行ってしまうお母さんを呼び止めるように僕は消えていく一日を名残惜しそうに呼んだのさ
ようやく 人の話にも素直に耳を傾けられるような大人になったのになぜか今日もこみ上げる涙と嗚咽であなたの慰める声さえ聞こえない届かない
いつか僕らはあの空のずっとむこうに旅立つそれまで僕らはあの夕陽を何度見れるかな
そして綺麗だとか思えるかな
なんてことばかり
歳をとるたび思うのさ
とても悲しい景色さ
でもとても綺麗だよ
行かないで…
ずっと傍にいて
明日はきっと今日のとはべつの夕陽でべつの僕だろう
ああ 声のかぎり願った声 かすれてもかれてもためらわず叫んだ
波が引いていくように
押し寄せた波が貝殻さらうように しかるべき時の波が今日を彼方へ連れ帰る
いつも わかってるよ
だけれど オチをわかってるだけに悲しいよ
ああ 行かないで…
それでも夕陽は沈むのだ
そんな陳腐な言葉ですべてが黒く染まってゆく
ゆらゆら たばこような苦い夜に 月がこの部屋に 重たい光を落とす
ページは見境もなく次から次へ捲られそして季節は空の表情や街の彩りさえも変えていく
人の心も変えていく
目覚まし セットして明日も生きよう
街の景色に溶け込めカメレオン
目に映るすべての
悲しみが流れ落ちて視界が晴れたら…