詩人:良い席
太陽の戦士は何時も熱くて熱くて堪らない。
太陽防衛の任を任ぜられた以上、もう耐えるしか道が無い。
防衛隊長は堪えとーせと言う。
熱い。鍛えられた太陽の戦士は熱いだけで、それ以外何も無い。
思う。早く敵よ、来い。早く俺を、討て。
汗が出ていたのが、もう遠い遠い昔の事。今では、自分から汗が出る事があったという事が信じられないほど。
億弱にさせる魔羅め、太陽の炎で焼け死ね!。そう考える者も、奥底にて、熱さを恨む。
銘々に、誰一人とて、この願いに逆らえなかった。
ノイローゼの軍隊は、全滅を願う軍隊。
熱い情熱もからっきしに失せた燃える兵隊。
明日は明日で熱いだけ。熱さを感じる神経が一向に無くならない有様に悶えるだけ。
人が人の痛みを聞く。
イカロスが、羨ましい。
太陽が熱くて死ねる。溶ける事は、無い。
後、何億年待てば、何十億年待てば、討たれるだろうか。
憧れのベテルギウス防衛軍。華やかに、儚く散る防衛兵。
我々はド田舎の銀河系の太陽系の太陽番。誰が攻めてくるものか。地球ごとき、太陽に来る前に滅びるさ。
それから幾星霜、太陽は戦略的に価値が無いとされ、太陽防衛隊はシリウスへ転任した。
太陽より熱い火がある事を、頭ではなく初めて体で実感して今まで感じていた最大の絶望を超越してしまった。
シリウスの防衛兵は、新人いびりで少し元気になった。
死ぬまで唯一分からない事があった。
我々は何者で、何者から恒星を守っているのか。
考える事を止めた脳は、常に何かを失った。
ケプラー防衛隊の全滅を聞いて、何故か心が躍った気がするのであった。
今日も何者かによって何の目的か、恒星は守られていたのであった。