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[192653] ストロボ

詩人:どるとる


南十字星に 向かって歩いていくような
静けさに のまれた街の片隅で
段ボールで出来たギターを 抱えて歌う

メロディが 星ならば声は 空だろう
さながら言葉は 目には見えない
あなただけの 想いだ

そっと目を閉じるとき シャッターが静かに降りて

今というこの時を 記憶のネガに焼き付けるよ

消えないように かすれないように
色褪せることのない 思い出を

忘れることのないように 痛みと共に抱きしめよう

まばたきするたび 星が散らばるよ
七色の 星が 目の前でキラキラと
路地裏で 猫が 冷たくなって横たわる

生きる者に 課せられた 命の約束事
弱い者にも 強い者にも等しく与えられた死

生まれ来る 命の産声に どれひとつ 同じものはなくて

似ているというだけで 似て非なる 声と輪郭を持つ

笑ったり 泣いたりの繰り返しの中で
大切な思いにいつかは気づけるだろうか

優しいばかりでは忘れてしまうから 傷痕と共に 生きるよ

忘れたくない場面に シャッターを切るなら
ストロボを 焚いて 暗闇を照らして
その向こうにある隠してる悲しみごと形に残そう
嘘や偽りで ごまかさないで
それもまたひとつの思い出だから

そっと目を閉じるとき シャッターが静かに降りて

今というこの時を 記憶のネガに焼き付けるよ

消えないように かすれないように
色褪せることのない 思い出を

忘れることのないように 痛みと共に抱きしめよう。

2016/10/02 (Sun)
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