詩人:evans
むかし見た思い出の山
むかし上野駅から
母と妹と3人で乗った
しなの路へ向かう
懐かしの特急列車
「あさま」
暑い夏の日
おばあちゃんの顔を
思い浮かべながら
藤村ゆかりの城下町への
想いを馳せて
鉄道唱歌のチャイムを
聴きながら旅立つ
釜めしを味わいながら
碓氷峠を越える
僅かな停車時間に感じる
海抜1000mのさわやかな風
進行方向 車窓右手に見える
雄大な山は いつもぼくらを
温かく迎えてくれた
母が9回も登った山
幼少のころ母に連れられ
出かけた鬼押し出し
おばあちゃんと手をつなぎ
「夕焼け小焼け」を歌い
歩いた信濃のあぜ道
いつも近くに
あの山はそびえていた
93年を生き抜いた
あなたは
いまは病床で意識も僅か
昨夜
あなたを見守りつづけた
あの山は
ぼくらとともに
悲しみの涙をながした
それは
信州小諸の城下町に
生きるおばあちゃんの
苦痛の叫びか
長年健気に生きた
おばあちゃんへの
励ましなのか
祖母との思い出の山
あさま山
あなたの言葉を
思い出す
「この山が噴火する年は
良くないことがあるんだよ」と
おばあちゃん
早く快復して・・・
もう一度
ぼくと話をして・・・