詩人:どるとる
目には見えない光がある
耳には聞こえない音がある
目を閉じて探すのは
耳をふさいで探すのは
そんな音や光
暗闇の中に落ちた
涙があるのなら
意味なく消える数秒も
重なって 美しく輝く
またとない 命を持つ
この世界にたったひとつの名前の僕という存在は
ただ所在なく 立ち尽くす影を揺らして
明日に 吹いていく風になる
手の届かない 場所がある
どんなに 手を伸ばしても届かない
小さな手のひらに ふれるぬくもり
そっと 消えない思い出を刻んで
窓越しに見る 木々のひとつ
枯れ木から 落ちたひとひらの葉に
重ねた 命の末路
日の落ちた 街並みは 言葉もないまま 明かりを抱いて
笑う君を 遠くから眺めてる
かけがえのない暮らしを抱えて
老いていく体は きっと
僕にこう言ってる
老いていくことは
時の流れを 知ること
悲しいばかりじゃない まだ知らない明日を知ることができるから
またとない 命を持つ
この世界にたったひとつの名前の僕という存在は
ただ所在なく 立ち尽くす影を揺らして
明日に 吹いていく風になる。