詩人:どるとる
瞳に映るものを信じていたら
いつの間にか季節は通り過ぎ
随分いろんなものをなくしていたことに気づいた
カメラのシャッターを切って
世界を閉じ込めても
その時の思いには到底
及ばないよ いくら写真を 愛でてみても
ふれられない幻ならいらないのさ
手を伸ばしても 透明だからつかめない
かすれたような声で僕の名前を呼んで
穴だらけの傘で 雨を避けようとした
あの日のおろかさを忘れないで
痛みだけはずっと覚えておこう
鏡に映る 世界と逆さまの世界
それは小さな間違い探し
物語はまだ始まってもいなかったことに気づいた
踏み出したその一歩で何処まで行けるかな
時を重ねて 階段を作って 昇ってく
幸せはいつも 形のないあやふやな輪郭
ぼやけた ピントがただあるだけ
時を閉じ込めるカメラだって
光や風を閉じ込められなくても
思い出すだろうその時の気持ちを
それくらいでいいのさすべては
きっと 形あるものだけでは
ふれられない 場所がある
それを知ることもまた
生きることならば
心静かに受け止める
ふれられない幻ならいらないのさ
手を伸ばしても 透明だからつかめない
かすれたような声で僕の名前を呼んで
穴だらけの傘で 雨を避けようとした
あの日のおろかさを忘れないで
痛みだけはずっと覚えておこう。