詩人:千波 一也
わたしの肩が
知らず知らずに
雪を溶かす、ということ
それは
もしかすると
物語ることを知らない
ほんとうの物語
容易には
何事も信じないけれど
疑うとなれば
それもまた
難しい
時々
あなたが見えなくなって
そのくせ時々
よく見える
さびしさは
よく出来た熱、と
おもいませんか
溜息のなかに
わたしを放り込めるのは
他ならぬわたし自身だ、と
そっと空から聴いている
震えてみせる指先を
たとえば耳の
あかさに
寄せて
絡みあう意味の
真ん中あたり
冬にも冬が
訪れます
あなたの胸が
知らず知らずに
雪を溢れる、ということ
それは
もしかしなくても
失うべくして失った
探しもの