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[193110] 最後のわがまま

詩人:どるとる


夕暮れの野球グラウンド
君は マウンドを走る
点をとられて 悔しそうにしていた
遠くから 声援が聞こえる
負け勝負涙を 拭いて笑った

泥だらけの ユニフォームとスパイク
木のバットと色褪せたグローブ

見上げた 空には もう星が輝いて
日の短さに 僕らは冬を 思う

手をつなぐことさえ恥ずかしいから
指を絡ませて 照れ笑い

東京の暮らしは どうだい?
うまくやれていますか?
メールは苦手だから 電話をください
ふるさとは 今日雪が降りました

写真を一枚送ります
あなたが家族を忘れないように

いつだって帰る場所は ここにあるから
嫌になったら 帰って来てください

あなたの ことが心配な母親のお節介です
何よりあなたが幸せであることを願う

段ボールいっぱいの仕送り
封筒に入った 手紙
涙ながらに読んだ夕暮れに
僕はあなたを 思った

遠く離れた 場所、知らない土地での暮らし

慣れたなんてお世辞にも言えないけど
なんとか 暮らしています

押し入れから引っ張り出した
小さなグローブは僕にはもう小さすぎるね

僕はもう立派な大人だ
一人でなんでもやらなくちゃ
だから見守ってて
あなたの 出来損ないの息子からの 最後のわがまま。

2016/12/17 (Sat)
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