詩人:千波 一也
軒先で待っているのは
はじめての雨
覚えるばかりでは
砕いてしまう
なにもかも
降る音も
そそぐ景色も
かなしい無限として
砕かれてしまう
一粒よりも
はるかにもろい
ただ一匹の存在に
まぼろしのような爪に
頼るともなく
暮らしは
傾いていたのだろう
五感をただしく
なげうって
ふるさとがまだ煙のうちは
凍える季節もわるくない
できるだけ
たくさんの意味に
連れられて帰りたい
薄皮みたいな
よろこびでいい
だから、円く
円く描かれ
揺れて
みる
軒先で待っているのは
おわらない雨
ふしぎに濡れる
傘のなか