詩人:千波 一也
そっと
手のなかで砕けてゆくものを
花、と呼びます
透きとおる風に
聴きそびれた使いを
そのみちを
ためらいながらも、
懐かしむように
かばうように
唇は、
うるおいほころび
開かれます
咲いてゆくものは
摘み取りなさい
やがては同じ
無限なら
精いっぱいのしずけさで
こぼれることです
あすがあるなら
まるで
列車の日々のような
匂いについて
揺らすどころか
揺られるばかり
記憶、とよばれる
やさしいあやまりを
過ぎて重ねて
言葉は円です
まっすぐに
そそぐのでしょう
蕾は、空から
いつでも
空へ
いつくしみ、とは似て非なる
包まれかたを
緩ませて