詩人:千波 一也
かじかむ理由は
雪ではないね
それは
雪のなかでこそ
探せるものだけれど
雪そのものは
寝ているだけだね
てぶくろは
つかのまの嘘だと思う
夢だとか
情けだとか
その素顔のことは
きっとだれにも
責められない
信じることで
ほつれてゆくから
疑うべきだろう
その哀しみを
毛糸も綿も
やさしい幻だと思う
すべての冬は
とまらないけれど
確実に過ぎてゆくけれど
吐く息は
てのひらを染みてゆく
守るかぎりは
何度でも
真っ白く
凍てつくことは
しずかな躍動
北風は
言わないね
さよならなどは言わないね
空から降りるすべの下
或いはときどきその上で
頷くことを
なくさずに