詩人:番犬
とある街
いつもの日常に
そぐわぬ風景
空腹で苦しむバケモノがいた
とても太り
醜く
暴れ
歯で砕ける物は全て
たるんだ顎肉の内に収めた
食べても食べても
満たされず
飲んでも飲んでも
満たされず
彼はもがいていた
周りの人間からすれば
奇異怪々そのもの
迷惑な生物
それでしかない
しかし俺にはよく分かる
俺もバケモノ
醜いバケモノ
満たされないバケモノだから
彼の苦しみは
俺の苦しみ
暴れることも
傷付けることも
底なしの食欲も
全て同じだ
一杯のスープ
一枚のパン
たったそれだけ
誰だっていい
愛情と共に
この手にくれれば
この空腹は満たされるのに