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詩人:灰色
別に不幸自慢がしたいわけじゃないのに、
口を開けば、溢れだした不満の欠片で誰かを不快にさせてしまうのではないかと恐ろしくなる。
だが口をつぐんでしまえば、つもりつもった苛立ちや、理不尽や、傷ついて剥離した心がぽろぽろと身体中を満たして、息ができなくなる。
浅い呼吸は喉の奥で詰まり、
役に立たない脳は息の吸い方を、
酸素の取り込み方を、
忘れてしまう。
息ができない。
鼓動がうるさい。
でも、そんなのは誰にも関係がないし、声高に主張したいわけでもない。
だけど助けてほしい。
心の内でこっそりとつぶやく。
でも、誰に?
もっと大変な人なんてそこらじゅうにいるのに?
誰もがいっぱいいっぱいの中、生きているのに?
口をつぐんで、目をつむって、
時折溢れ出してしまう不幸の欠片を慌てて拾い集めて胸に抱いて、蹲って、笑顔で。
……助けてほしい。
誰か薄っぺらで無責任な優しさで、
根拠もなく大丈夫だと言ってほしい。
それを責めたりなどしないからどうか、大丈夫だと断言して。
私は悪くないのだと、どうか。
「おまえはいい子だ」
と、どうか幼いあの日のように、
いい子だというだけで、どうか私を認めてほしい。