詩人:はるか
真新しい本を一冊
手にとると
肌に吸いつくみたいに
なめらかです
季節でいうなら
それは5月の
草原をわたってきた
風のようで
これから出会う
かずかずの言葉たちに
鼓動は早鐘を
うち鳴らし
先へ 先へと
私をよく
急きたてたものです
今日の日まで
それでも私の人生と
一緒に生きてきた
彼らは
やがては
私自身の
手あかにまみれ
吸いあげる
喜びやかなしみにつれ
その身をセピア色に
変える日がきても
ただ黙って
そこにいて
添うように
ひらに馴染んでくる
ありがとうでは
足りない気持ちを
どんな言葉で
返していいのやら
ざらついた表紙を
なでながら
想いは宙を
往きつ戻りつ
果てなき道中を
さまようばかり