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詩人:どるとる
夕暮れの彼方から
揺れながら揺れながら
さしこむ なだらかな時間
帰る人 かき分けて
風が 背中 撫でる
学生服のボタンが金色に光って まぶしい
ちょっと 傾斜のある坂道をくだる
そしていつもの家路をただ 歩いてゆく
カラスがバカにするようにいつもの具合で鳴いている
それを聞くともなく聞いているとなんだか妙に切なくなる
夕暮れのオレンジ色と迫る夜のコントラストが僕の中に渦巻く不安やらいろいろな感情を全て混ぜ合わせる
全て混ざり終わったら涙がすっかり暗くなった道に落ちた
もう家はすぐそこだというのに立ち止まる
なんとなく家に帰るのが 惜しまれる
なんとなく 空に浮かぶ 月をここから眺めていたくなった
こんな気持ち なんていうのかな
名前はきっとない
それでも なんていうのだろう
言えそうで言えない気持ち
もどかしいからそういうことにした
そんな夜の出来事
机上の空論のように
誰かの独り言のように
日々の 水底へ沈んでゆく
もっと大事なことの下に埋もれてゆく
自分としてはそっちのほうが大事だというのに…
大事なことはいつも忘れた頃に思い出してまた忘れて繰り返す
こんがらがった
気持ちは
どんな言葉でも
しっくりこない
だから 名前のない気持ちなのさ
あとは寝てしまえば
全てがまたゼロに戻る。