詩人:千波 一也
風を
くぐりぬけると
また新しく
風がある
ときにあばれて
ときに乱して
かろやかだったり
微かであったり
あらゆる表情を持ちつつも
ひとつにまぜた
名前で呼ばれ
それを
知ってか知らずか
風はときおり
ぱたり、と
とまる
ひとつの訴えかもしれないそれを
容易に見過ごしてしまう
わたしたち
めぐりあう風は
ひとつひとつが
ちがうのだろうか
それとも
おおきなひとつだろうか
わからなさを
上手につれて
わたしたちはまた
風をくぐる
こまやかに
こまやかに
動をなす
ここは風のくに
個々に織りなしてゆく
風たちのくに