詩人:タキシード詩者
よく、自殺願望を持つ人に自分より不幸な人を見ろなんて言う人いるけど、それって違うんじゃない?
私は毎日キラキラした衣裳を着てステージをこなす。
きっと、そんな事を言う人からすれば、私は幸せこの上ない人間なんでしょう。
でも、自分の幸せは自分にしか分からない。
余計な口出しされると、もっともっと…今以上に、この振り子みたいなブランコから手を離してしまいたくなるじゃない。
私は別に、死にたいとは思わない。
でも、いつも消えてしまいたいという願望と隣り合わせで生きている。
そう。
死ではなく、消滅。
自分がもともと存在しなければ、誰を悲しませることもないじゃない。
もっとも、自分がいなくなったところで誰も涙も流しやしないだろうけど。
自分の存在自体が罪悪に感じて、生きることが迷惑になっている気がする。
どうしてこんな風になっちゃったんだろう?
それは自分にも分からない。
うちのサーカスの目玉は、世界で一番高い場所で行なわれる空中ブランコショーなの。
もちろん命綱なんてないし、必要ないわ。
団長はこのスリルがたまらないんだって薄笑い浮かべてる。
あぁ…私の体が宙を舞う。
今ここでこの人の手を取らなければ私は真っ逆さま。
神様、私は消えられる?