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[64952] ひととき

詩人:丘 光平


生まれたばかりの花の額にも
その枯れてゆくしるしが淡く灯っている、そのように
わたしたちは始まったのだろう

ときおりわたしたちは
語り合うことばの雪片におののき、そのために
重なり合うまなざしに
まだ熱のあることを悟るのだ

そして街を、野道を、あるいは道なき道を歩みつづけて
わたしたちはわたしたちに触れる、その静けさ
その静けさのなかに
かつて思い描いていた幼いあこがれや
ただ美しさを装う嘆きの
本当の姿を垣間見る・・・・・・

 たとえば、わたしたちのそばで物言わぬ一本の枯れ木
その澄み切った沈黙にこそ
彼のすべての声が
高らかに暗示されている、その慎み

そして
立ちつづけてきた彼は
じっとわたしたちに耳を澄ませて
わたしたちのひとときを
他に取り替えようの利かないこのひとときを
せめて祝福してくれるのだ

2006/01/31 (Tue)
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