詩人:清彦
玄関の鍵を閉めた途端に
部屋の湿度は一瞬
あの頃を映してしまって
何もわかっていなかったあの頃を
悔しくも愛しく思い出すのです
夏の蜃気楼はさよならを
幻だったみたいに全部うやむやに
歩道に沿って進む足を止められないで
ただ 景色を見送っていた
もう
これだから 夏は嫌いで
汗ばむ額を袖で拭いながら
空をまた何度だって見上げるのです
雲はどこまでだって流れていって
自由とは何かを思わせてくれます
ねえ
愛しいひと
覚えていますか?
あの耐えがたいほど退屈だった夏を
もう
随分 時間は
容赦なく全てを飲み込んでしまっても
いつまでも いつまでも
終わらない夏の日
あなたと
永遠を過ごして