詩人:千波 一也
それは
見覚えのある目
はっきりとは覚えておらず
覚えておけるはずもなく
覚えておいては
いけない
気もする
或いはそれは
鳴りやまない声
欲しがるように
さげすむように
さえずるように
凍えるように
だれだっただろう
なぜだっただろう
乾いていかない
行き止まり
そうしてそれは
ふしぎな匂い
ごまかしきれず
逃げきれず
断りきれず
待ちきれず
最後はいつも
こちらの方が捕らわれる
底なしの
あぶくが無数につながって
暗く
重たく
底になる
だれかのためにその底は
必ず不穏に
ないている
それは
終わりのないはじまり
逆でも良いけれど
逆でも良い
けれど