詩人:千波 一也
両手に
すくい上げた水の
清らかさもすずしさも
やがて乾きをたどります
両手を離れ
あるいは、両手という
はじまりを伝って
しずかに水は
果てるのです
救い、という字は
すくい、と読みます
すくい上げた水のなか
かような言葉が
こぼれます
ちから無きものが
更にちから無きものを
請うようにして
祈りや願いを
続けてきました
両手を満ちる非力さに
まっすぐ曲がらず
来たのです
だれもが
河でありましょう
巣くう、を
すくう、と読みながら
やさしい支流を
なすのでしょう
いつか
寄る辺に惑うとき
さかなは跳ねて教えるでしょう
落ちるしかない音だとしても
生まれる意味の上澄みに
ひとりの光が
あることを