詩人:けむり
あんまり簡単じゃないな と思う
生きていくことって
特別にわずらわしい困難があるわけでもないのだけれど
ふわっと 消えてみたくなる
空に浮かぶ雲がいつまでもそこにはないように
ぼくを知る全ての人から遠ざかりたくて
五月だからかも…
特にこんな不安定な天候の日には…
ああ もしもぼくがウェンディだったなら
今日こそピーターパンを待っているのに
ここではないどこかへ行きたい
誰もぼくを知らないところに
新しくなりたい
過去のない今というところに行きたい
生きること が重い
こんなにも苦しいなんてとしみじみするくらい
きっとみんなは楽しいんだろ
目が覚めて 眠りにつくまで 楽しいんだろ
生きなきゃなんて当たり前のことを誓う
生きるんだ
きっと 明日はいい日だから
見上げれば空はあまりにも清廉でかなしくなる
小さな盾をかまえる
ぼくがいなくなったら誰が猫の面倒をみるのさ
生きなくては と胸の中で活字にする
必要なものは何
生きていくのに補わなくてはならないものは
…
…
褒めてくれ
これまで生きてきたなんてすごいねと
未完成なぼくに
当たり前のことを
完成 と電子辞書を引いてみれば
完全にできあがること。完全に仕上げること。
と書いてある
完全 と電子辞書を引いてみれば
すべてそなわっていて、たりないところのないこと。欠点のないこと。すべてに及ぶこと。
と書いてある
生きるとは何 と打つ
電子辞書は正しく反応しない
電子辞書は問いに答えない
生きる については答える
そこに出た答えはぼくを救わない
心 とは何
同じくぼくを救わない
電子辞書の性能なんてわかっている
ただ遊んでみただけ
ほしいものもわかっている
生きるとは何という疑問の答えを
得る方法もわかっている
生きなければならないんだろ
求めたものにとどくには時間がかかる
生きなくては 胸の中で活字にする
今日よりもきっと明日はいい日だ
そう信じる