詩人:遥 カズナ
幼稚園の頃 動物園で子象の背中に乗せられた
何か勿体のないような順番待ちの中
僕は誰かに両脇を抱え上げられると
ただ突然に空へ
ほうり投げられるように跨がされた
両手に触れたその背中は
ひび割れた皺が渇いた大地のように生温かく
その生えた毛は 痩せた土地の草のように疎らで
上から見下ろした 親や見物人達の よそよそとした期待の様子の遥か高く 遠くにある その土地…
海の向こうから連れてこられて
何が分かっていた筈も無いその子象との出会は
ぞんざいな記憶だけを僕に宛てがい
どうにも釈然としない感触は ただこの手に
今も遠く蘇るばかりだ…