詩人:千波 一也
そっと
腰を下ろし
いつものひとりに戻るとき
うるおいじみた
乾きがあふれ
ぼくは
あわてて
目をとじた
思い出はいつも
胸に痛い
握れるものの少なさが
はっきりわかって
しまうから
ぼくらの言葉は
気泡のようで
海の
世界の
生きものみたいだ
夏の季節を
離れられずに
けれどもそこを
うまくは
泳げず
淋しさを
かくまうことで
なお募りゆく淋しさに
しずかなほのおを
ぼくは見た
いともたやすく消えてしまう
おだやかな火を
ぼくは見た
ときを飲みこむ
水の気配に
ちいさく胸を
ふるわせて
2008/08/09 (Sat)