詩人:千波 一也
空から
落ちた日のことを
おぼえていない
海を
ながめることを海として
その浅きをのがれる
すべにおぼれる
太陽はもう
ことばではないけれど
確かにぬくもる
手立てはわかる
雨にも
風にも
こころがあるということ
たとえもう聞こえなくても
わたしたちが物語なら
それだけでよいのだと
わたしは、そう思う
さりげないあやまちを
たやすく過ぎ去る微笑みは
けっして常ではありえないから
必ず
この手は
つかみそこねる
たとえばかなしい理由について
はぐれてしまう
けれど、
それでよいのだと
わたしは、そう思う
花の
なまえの咲くなかで
大地とよく似た
孤独に立って