詩人:千波 一也
いまは
ちっぽけな木の枝も
十年、二十年の歳月をゆけば
おおきく生長を
とげる
その、
生長をとげた木の枝のもと
だれもが心地よく
風に吹かれるような
あかるい午後が
続けばいい
木の枝を
まっかに染める血の色や
木の枝に引っかかる
骨の暗さや
木の枝のもとで
息絶えてゆく兵士の姿を
わたしは知らない
わたしは
戦争を知らない
知らないままで、いい
いつか、
ちっぽけな木の枝の生長に
「おおきいね」って
だれもが言葉を
そろえるような
平和がずっと
続けばいい
こころを痛める記憶を持たず、
ただただ未来へ
駆けてゆく
そんな地平が
続けばいい