詩人:千波 一也
雨よ降れ
ざんざん降れ
と、こいねがう村がある
たった
ひとつぶの雨だれにも
没してしまいそうな
舟がある
めぐみや恐れや
あれこれは
ありえぬ声で
あたりまえの日々に
生み落とされる
それを聞いたか、
きみは
聞いたか
笑顔はときに
ひとの痛みをやわらげる
そうして
ときにひとの痛みを
なお深くする
わかりやすさの延長にある
わかりがたさから
絶えてはいけない
響きがあふれる
向こう側、と指をさす
その自分にとって近しい距離を
遠くでだれかが
きっと見ている
それは
どこまで笑顔だろうか