詩人:トケルネコ
夜は翼のないカラス
微塵もない記憶の点字
裸足で踏む画鋲すらいたずらに沈む
紅いボウフラを見守るのに ガラスのスコープを覗いては
深海の青い花束を探す
その息を切らして倒れ その息を凝らして眠り
預かった鍵束の意味
月を挟む黒いクチバシ
関係を途切らせた嘘と本音
関心のスロープに零れゆくネジ
僕ら結晶のカーネーション 新しい夜明けにただ散らすだけ
その息を殺して悶え その息を飲み込む度
死んでゆく
あの空も
枯れてゆく
あの手紙も
遠くなってゆく
母の手も
父の背も
絆の温もりも
ひそやかに
消えてゆく
なにもかも
なにもかも
なにもかも