詩人:甘味亭 真朱麻呂
電車をいくつか乗り継いで
バスに乗っかって揺られながら
そして三つ目の停車場で下りる
そこは昔僕が住んでいた故郷
朧気な記憶だけを頼りにさまよう
見覚えのある景色がいくつか見える
あの頃よりも少し高くなった背丈とやせた頬
キョロキョロしながら懐かしそうにあの頃を想い返す
変わったのはこの町も同じで
少し胸がきゅんとするほど
面影のある建物や店が軒を連ねる
一つ一つ思い出しては頷きながら次の場所へ次の場所へと歩いていく
あの頃僕が見てたのは
不安ばかりで
今もそう変わってない
けれど変わらないものが一つくらいあった方がいいと思う
すべてが変わってしまうのは
きっと想像するより遥かに悲しいから…
思い出は今もこの胸の中消えず残ってる
今も瞼を閉じればまるで昨日のように鮮やかな日々を映し出す
気づけば
ほらまた泣いてたよ
沈みゆく夕陽を背にして涙を流す
もう返れない日々を名残惜しむように
そして
一歩一歩未来へと進む時の儚さを痛いほどに感じたんだ
あの頃夢に描いた未来は掴めなかった
けれど
きっと僕なりの未来は掴めたと思う
あの頃の迷いや悩みは無駄じゃなく
きっと意味のあるものだったと今なら
自信を持って言えるんだ
それほど僕は大人になったんだ
でも
いつになろうとこの胸にある思い出は
忘れないよ
忘れるもんか
帰りの電車の中
少しうつらうつらしながら僕は涙をのんだ。