詩人:千波 一也
いつかわたしも
潮風になる
いいえ、
それよりもっと目立たない
砂の声かもしれません
潮風が
きびしいながらも心地よいのは
おそらくそんな
匂いのせい
わたし、
むかしは雲になりたかった
そしてときどき
星を夢見た
もう何もかも
遠くへいってしまったけれど
うらぎり未満の
なつかしい
傷あとは
潮風のなかあらわれる
かなしみだけでは生きられない
よろこびだけでも
生きられない
この
めぐまれ過ぎた不都合を
声なきことばに
聴いている
いつかわたしも
潮風になる
けれどまだ
何かにそっと
おびえてみせる
潮風の
なか
2008/11/24 (Mon)