詩人:トケルネコ
泣かないでほしい
空が暮れるままに
月をあつらえないでほしい
森の奥で燻ったままの
灰を探してほしい
砂が時を流すのか
時間が石すら溶かすのか
引っ繰り返ったまま
君は瞳に何を映すのか
砂時計はザラとも軋まず
深夜の腹時計だけは吠え止まない
冬の空にへばりつき
母は昔から
赤いトナカイを撃つ
子供達はいつからか
雪を食べる
凍みないようにゆっくりと
ゆっくりと穴を掘るように
さぁ、もう少しで詞が書ける
さぁ、あと一歩で歌になる
紅白に塗り潰す準備はできたかい?
救いようもないリリックに溺れよう
助けにきた腕を引きずり込もう
俺たちは水中のコウモリ
誰にだってなれるもんじゃない
誰もなりたがらない 闇夜の鎚音
引っ繰り返ったまま
ぶら下がり何を歌えるのか?
泣かなくていい
日が暮れたまま
朝をもう、謳わなくていい