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詩人:右色
簡単に手に入るソレはなんと言ったか。
食べるだけなら、それでいい。
とにかく、目に映らなければ、どうでもいい。
心が少しだけ溶けて、影と混ざる。
境界は黒だ。
色だけはハッキリ見えるし、言える。
だからといって、何かが変わる訳でも、誰かが救われるワケじゃない。
ソレはだんだんと曖昧になってゆく。
たぶんムシじゃないかな。
虫でも
無視でも
無私でも
なんでもいい。
ああ、でも、そんな簡単な構造だったかな。
影の中に心臓が出来上がる頃になって思いつく。
後悔した。
仕方が無いので、諦めた。
ともかく。ソレはアレだった。
好きだって、言った。
確かに、言った。
千までいくと大げさでウソだけど。
百くらいなら軽く、言った。
影に心臓なんて無かった。
倒れた言い訳がしたかった。
忘れようとした。
忘れようとしたことを忘れようとした。
忘れようとしたことを忘れようとしたことを忘れようとした。
立って居た場所はそんなところ。
安全で安心だと思った場所は、一つ思い出すだけで脆くも崩れ去る。
でも、よかった。
心は思った。