詩人:千波 一也
しずかな雪のあいだから
わずかに土が
見えるとき
わたしは灰の
そらを見あげる
まだそこに
凍えるものはありますか、
小さな呼吸は
ぽつり、と白く
あたたかそうに消えてゆく
この手はいつも
透明なものを握っていて
そういう事実たちに
握られてもいる
何度でも、
正確すぎる春にふれ
わたしは染まりつづけます
思い出すでしょう、
なつかしい匂いと
過ぎゆく風を
そらから始まる雪たちが
もうじきそらに終わるころ
わたしは切符の
滲みをたどる
わたしの生んだ文字たちの
姿をそこに確かめて
まもなく
列車がまいります、
いつか、のために
いつかを
乗せて