詩人:千波 一也
水に
突き刺さることができるのは
真夏のひかり
真夏、という
ひかり
湖面にそそぐ陽光は
銀のうろこの魚に変わる
気ままに歌うぼくたちは
それを統括する竪琴で
自分にすなおな
人魚さながら
風が往く
水に映るのは
山がいい
動かない、ということが
ささやかに崩れて見えるから
そういう意味では
雲も同じ扱いになるけれど
雲は純情すぎて
ときどき
ずるい
木々のにおいは
水につながる
そのことは
実に緻密な不思議であって
緑の向こうの金色に
やすらぎながら
なお潤って
水は
自分が水であるために
真夏のひかりに
囲わせている
つとめてしずかな
命令で