詩人:千波 一也
ねじが切れると
メロディは
ゆっくり
終わりを
始める
それは
寂しいけれど
唐突ではないあたりが
優しくて
たぶん
わたしの一生も
こんなふうに
終わりを始めるのだろう、と
最後の
メロディの
続くともしれない
続きを
待っていた
近ごろ
少し
涙もろくて
許せることが
ふえた気がして
ときどき
つい
昨日のことさえ
懐かしくなる
もう
戻れない
時間はいつも
空を
横切る
とぎれた
メロディ
あと何回
ねじが切れても
まき直せるか
そっと
わたしは
聞き耳立てて
運河の
風を
浴びている
終わりは
さほど哀しくない
メロディに
帰って
ゆけるなら