詩人:番犬
アメージング・グレイスは歌わない
歌わないというより歌えない
その誕生の歴史を知っている限りは
畏れ深い重みの為に
俺の声帯は動かなくなるのだ
趣味程度の野球をやってはいるが
決して野球選手とは名乗れない
少なくとも高みを目指す人がいる限り
その名を語る事など
趣味人の俺には許されないのだ
柔道二段の資格はあるが
俺は柔道家とは名乗れない
こうして今も携帯をいじり
自己満足を満たしてる間に
汗を流す奴らがいるから
昔の俺なら胸を張って
自分自身を詩人と言えた
しかし今は違う
胸のモヤモヤは取れてない
なにも書けていないのと同じ
ゴミくずみたいな紙を積み上げ
すがりついてペンを曲げ続ける
音楽をやめてまで進んだ道が
曲がりくねっているのは
誰のせいでもない
俺の視界が歪んでるだけだ
それは俗世間の煩悩にまみれ
自分自身と対峙しない己が弱さ故
俺は俺を救い出したく
物を書き続けてきたが
救われたのは少なくとも自分じゃなかった