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[165445] 晴れの日

詩人:EASY

世の中が便利になると
想い出が作りにくくなる

教授は
力強くそう言った


何を根拠のない事を言っているのだろうと

僕は思ったが

よく考えると
何だか妙に説得力があり

僕は
それに耳を傾けた




不景気は愚痴を言う為に必要であり
経済とはあまり関係ない

そして

愚痴を言わなければコミュニケーションが取りにくい現代人が発明したものが
便利なものである

教授はこの数式を黒板に書き
ブラックホールの秘密に迫ろうとしているのだ


僕は

この訳の分からない教授の理論に
訳の分からない心地よさを感じていた



教授は続けた



道路はロードである

あるまじき姿のアルマジロである

教授は得意気に言い放ったが

会場は静まり返っていた

少し後に
乾いた小枝が折れた様な

小さなラップ音が
会場に鳴り響いた



その音にビクッとしたのは


見たところ

教授と僕だけだった



講義の後

昼食をベンチの上で
一人食べている教授を目撃した



手作りと思われる
大きなサンドイッチを

教授は食べていた


教授は独身である

きっとサンドイッチは
自分で作ったのだろう



外はとても晴れていて
春を覗かせていた


今日が晴れで良かったと
僕は心の底から思った

これほどまでに
そう思ったのは

小学校の遠足以来かも知れなかった





僕は

訳の分からない愛しさを身にまといながら


人間の愛し方を
またひとつ知ったのだ

2011/02/14 (Mon)
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