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[170410] ブルー、もしくはブルー

詩人:千波 一也


鎖につながれたまま

ぼくは海へと落とされた

からだが腐敗していくよりも

錆びついてしまうような、

そんな気配が恐ろしくて

頑なに

ぼくは目を見開いて

泳ぎ去る魚のひれなんかを

数え続けた

果たして

なんの意味があるだろうって

うたがいながら、

数え続けた



 この海の

 広さについて

 きっと誰もが知らなくて

 だから誰もが

 おののいて

 毎夜

 ひっそり

 懐かしむ


 鳥たちと

 鳥たちの空へと

 あこがれを抱いて

 つまずきながら

 その都度

 こっそり

 海を嗅ぐ

 もう、

 あまりに塩辛すぎる

 言葉をたくさん散らかしながら

 帰りようもない

 海を嗅ぐ



ひと月も経てば

おそらくぼくは打ち上がるだろう

鎖につながれたがる、少年の眼前に

予定どおりに

着くだろう

ぼくはそのとき

なんと名乗ろうか

名乗らずとも、きっと

少年たちは呼ぶだろうけれど

不自由すぎる

慣れた手つきで

少年たちは呼ぶだろうけれど



ぼくは

考えている

昔よりは

だいぶ軽くなった感じで

海藻みたいに

考えている


かたわらに

恋人を縛りつけて

友だちも縛りつけて

優しく、

ていねいに、きつく、

優しさの方角を見失いながら

優しく、と

言葉に

出して


海底の、

海底の、

ずっと浅瀬に

ぼくはいる


2011/08/11 (Thu)
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