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[170432] 漆黒

詩人:千波 一也



夜、は

首筋からこぼれ落ちて

かすかに甘い蜜のにおいを

隠している

命令に逆らいたい鳥たちが

もうじきそれに気づくだろう

囲いはすでに

万全なのだ



風がかくまう絨毯のうえで

猛毒は騒ぎもせずに

涙している

おのれの涙と

夜のしずくが

とけ合うように画策している



炎はその背に

氷の縁を負っている

ゆらゆら揺れて、

せめてもの

高熱で


飛び入りたがる者たちを

必死で睨みつけながら



夜、は

ちいさなものほど守れない

歯車が

明白であることだけが

やすらぎと信じて

巨大なものたちが

永遠じみて、

いく



2011/08/12 (Fri)
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