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[85315] 火の鳥

詩人:千波 一也


幾千幾万の人波は終わりを告げない


すれ違う一つ一つの顔を

忘れる代わりに

白の背中が鮮烈に映える

本当は

黒であり 青であり 

赤であるかも知れないが

白で良い

すべて白で良い

わたしは背中を確かに覚える

燃え尽きた色だね、と

正面の活火山は笑うだろうか



いま、火薬という名の運命が夏の夜空を駈けのぼる



四方を囲む山々は

その足音を跳ね返し

散りゆく音を一つに束ねて

轟音を織り 地へ注ぐ

そして歓喜は呼応する


密閉された盛夏の地上で

拍手と 舞と 万歳と

宵闇の底で活火山は

ちらり と 横顔を見せた

一つも動かず

然れど黙らず



不意にわたしは

巨大な棺のなかに在ることを自覚した

いま、火種は放られたのだ



あまたの刹那は何処へと還るのだろう

輪廻は優しき永劫かも知れない

あまたの刹那は何処へと還るのだろう



幾千幾万の人波は終わりを告げない



潤んだ瞳を

次から次へ 空へと向けて

遠く遙かへ 駈けのぼってゆく

翼をもたない

その

白の背中で



2006/09/09 (Sat)
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